エビデント・イメージ・オブ・ザ・イヤー受賞者2024
この度、科学顕微鏡写真の世界ナンバーワンを決める、第5回エビデント・イメージ・オブ・ザ・イヤーコンテストの受賞者を発表できることを大変嬉しく思います。今年のコンテストでは、初の動画部門が加わりました。
今年の受賞者は、29カ国からエントリーいただいた参加者の中から選ばれました。ご参加いただいた皆様に感謝を申し上げるとともに、次回のご参加もお待ちしています。
グローバル最優秀賞
宇宙の比率の美しさ
コスミックオレンジ色をしたアスターの花の葯内で発育する花粉粒の断面。撮影者:Igor Siwanowicz(米国)
マテリアルサイエンス部門最優秀賞
生きとし生けるものをつなぐ
馬の毛(横)で結んだ人間の毛髪(縦)。撮影者:Gerd Günther(ドイツ)
米州
新視点の思いがけない発見
組織透明化によるテントウムシ。 撮影者:Marko Pende(米国)。
EMEA
自然は究極のアーティスト
人工多能性幹細胞由来の心臓細胞。撮影者:Till Stephan(ドイツ)。
アジアパシフィック
自然のグラスジェムを陳列
珪藻の配列。 撮影者:Daniel Han(オーストラリア)。
佳作
Frantisek Bednar (スロバキア)
半水生食虫植物であるタヌキモUtricularia humboldtiiの罠と捕らえられた水生ダニ Hydrachnidia。
Antonio Segura & Priscilla Vieto (アルゼンチン)
アルゼンチン・パタゴニアにて暗視野で観察した魚類寄生虫のコラージュ。
Sandra Story (米国)
一般的な土壌細菌である枯草菌Bacillus subtilisの正常な桿菌様糸状性細胞、および細胞壁を喪失した代表的な球状細胞の蛍光画像。
Luigi Olivo Bozzano (イタリア)
甲殻類のタナイス目は夜間に水柱を泳ぎ、光に集まります。UV光で刺激を与えると、キチンを発します。
Hana Sehadová ( チェコ共和国)
奥深さを覗いてみましょう。水生生物種オオタヌキモUtricularia macrorhizaの頂端幹細胞セグメントの断面図。
Yue Rong Tan (台湾)
潜水艦。画像はゼブラフィッシュの頭部を撮影したもので、頭部はpalm-mTurquoise蛍光タンパク質とmCherry核タンパク質を発現する上皮細胞に覆われています。
審査員
アジアパシフィック
Songhai Shi(清華大学 生命科学学院教授、博士課程スーパーバイザー)
中国・北京にある清華大学生命科学部の著名な教授であり、博士課程指導教官。長年にわたり、神経生物学、遺伝学、細胞生物学、発生生物学などの手法を用いて、脳の発生、形成、機能メカニズムの研究に取り組んできた。
Wen-Tai Chiu(国立成功大学 バイオメディカル工学科、教授兼学科長)
オプトジェネティクス、カルシウムシグナル、ライブセル分子イメージング、がん研究を専門とする。母校である国立成功大学の教授として活躍。最近のプロジェクトは、カルシウムイオン(Ca2+)のフォーカルアドヒージョンダイナミクス、発がん、化学療法抵抗性の制御に関する研究、および先進バイオイメージングの探求など。また、彼の研究室では、工学技術を組み合わせてオプトジェネティック・プラットフォームを構築しており、従来の化学的刺激とは異なる時間的・空間的スケールで、さまざまなCa2+振動を正確に作り出すことができる。国立成功大学のバイオイメージング・コア・ファシリティのディレクターである博士は、国家科学技術委員会のバイオ医薬品ナショナル・コア・ファシリティと提携し、ハイエンドの顕微鏡機器を学内外の学術部門や産業部門が共同で使用することを推進している。
米州
Geoff Williams(ブラウン大学ルデュックバイオイメージングファシリティ、マネージャー)
ブラウン大学のルデュックバイオイメージングファシリティで、14年の間マネージャー職を担う。コネチカット大学では、視覚芸術・科学・テクノロジー、そして顕微鏡技術を組み合わせて顕微鏡法(電子と光)を研究。その後、ミシガン州立大学院で修士課程を修了し、セントラルミシガン大学でイメージング施設の運営に携わるようになった後、現在のブラウン大学に着任。過去20年以上にわたり、電子顕微鏡と光学顕微鏡の両方の技術者として技術を磨く中で、単に科学的調査で求められるものに加えて、それぞれの画像が持つ美しさに注目するようになる。「Nanoscape」と名付けられた作品シリーズは、日常の生活の中では見逃してしまうようなミクロの世界を、触覚的かつ印象的に描き出す。
Harini Sreenivasappa(ドレクセル大学細胞イメージングセンター、マネージャー)
ドレクセル大学における光学顕微鏡の中核施設である、細胞イメージングセンターのマネージャーを務める。テキサスA&M大学(TAMU)の大学院で顕微鏡観察と出会い、心臓血管疾患の血管壁リモデリングで起こる、細胞の感知と適応に対する微小環境刺激の役割に関する研究に取り組む。この研究が生物医学工学の博士号につながる。原子間力顕微鏡(AFM)、スピニングディスク型共焦点、全反射照明蛍光(TIRF)など、さまざまな顕微鏡技術を横断して10年以上の経験を持つ。ASCBのCOMPASS Outreach助成金により、TAMUの研究者による顕微鏡写真を無料で公開したTravelling Micrographs展覧会を企画実施し、キュレーションを担当。一連の展示では、TAMUにおける研究の内容を地域社会と共有し、科学イメージングへの関心をかきたてることを目指した。
EMEA
Rachid Rezgui(ニューヨーク大学アブダビ校、顕微鏡法、研究機器科学者)
顕微鏡学者であり、活動的な研究科学者でもある。ドイツのライプリッツ・ハノーファー大学で物理学を学んだ後、フランスのエコール・ポリテクニークで単一分子レベルにおけるDNA-タンパク質相互作用を研究し、生物物理学の博士号を取得。2014年にニューヨーク大学アブダビ校の顕微鏡中核施設に加わって以来、あらゆる種類の顕微鏡(二光子顕微鏡、超解像顕微鏡、共焦点顕微鏡、蛍光寿命顕微鏡、広視野顕微鏡など)に携わる。中核施設の管理を手掛けながら、サンプル調製、トレーニング、データ収集 、後処理など光学イメージングのあらゆる側面に関与している。
Nicolas Schilling(チューリッヒ大学 顕微鏡・画像解析センター、顕微鏡アプリケーションスペシャリスト)
チューリッヒ大学で生物医学を専攻。修士号取得後、同大学のテクノロジー・プラットフォーム・プログラムに従事し、高圧凍結凍結固定法と超解像顕微鏡法を組み合わせた新しいサンプル前処理法に取り組んできた。2019年、同大学の顕微鏡共通機器施設チームに加わり、以来、超解像顕微鏡、共焦点顕微鏡、広視野顕微鏡、電子顕微鏡など、あらゆる種類の顕微鏡を担当。サンプルの前処理、研究者のトレーニング、データ取得、後処理など、担当業務は多岐にわたる。
過去の受賞者
グローバル最優秀画像は、Laurent Formery(米国)により撮影されました。
幅約1cmのヒトデ幼生(Patiria miniata)の神経系。透明化処理後にアセチル化チューブリンに対する抗体で標識し、色別Zプロジェクションを用いて撮影。