蛍光イメージングにおける顕微鏡用カメラの活用事例
蛍光イメージングでは、様々な要素をうまくバランスよくコントロールすることが重要です。可能な限り長い露出時間または強い励起光を用いて、十分に高いシグナルを得る必要がある一方で、励起時間を短縮し輝度を落とすことで、サンプル状態の光毒性を最小限に抑える必要があります。
これらの顕微鏡カメラのベストプラクティスで、そのバランスを決める方法を見つけましょう。
1. ヒストグラムを使う。
ヒストグラムは、理想的な露出時間を決定する助けとなります。つまり、ヒストグラムは、シグナルレベルの分布を示すプロットなのです。ヒストグラムのX軸はシグナル強度です。データは、カメラのシグナルレベルのゼロから最大値まで分布しています。下図1に示すように、X軸の各値でのヒストグラムの高さは、シグナル強度に対する画素数を示しています。
図1:ある画像のヒストグラム。(a) オリジナル画像、(b) オリジナル画像に示された各画素のシグナル強度、(c) オリジナル画像を基に作成されたヒストグラム
ヒストグラムの形と分布は、今の露出時間が適切かどうかを教えてくれます。蛍光イメージングの例の多くにおいて、画素の大部分はシグナルのない暗い背景で、背景レベル周辺でピークとなります。
低いシグナルの範囲でヒストグラムが密集しすぎている場合は、露出時間が短すぎます(図2、中央)。最大シグナルレベルで急勾配の崖がある場合、そのシグナル値は飽和信号です(図2、右)。この場合、励起強度を下げるか、または露出時間を短縮することができます。
図2:通常の露出(左)、低露出(中央)と、黄色マーカー箇所で飽和信号となった高露出(右)。
2. ディスプレイのダイナミックレンジをデータのダイナミックレンジと一致させます。
画像撮影ソフトウェアの中には、自動ディスプレイ補正機能を備えているものもあり、より良好な視認性を提供し、オリジナル画像データを維持しながら、シグナル強度とディスプレイの明るさとの関連性を決定します。
ディスプレイのダイナミックレンジをデータのダイナミックレンジ(背景レベルから最も明るいシグナルまで)と一致させることにより、オリジナル画像データを維持しながら、より良好な視認性を得ることが可能になります(図3、右)。この補正をわかりやすく示すためには、ヒストグラムが役立ちます。
図3:ディスプレイの補正。(a) オリジナル設定。表示されているシグナルの明るさが、ディスプレイのダイナミックレンジよりも暗い(255)。 (b) ディスプレイの条件が補正されたもの。
ここまで、役に立つ顕微鏡カメラのヒントとツールを確認してきました。では次に、実行に移しましょう。次のセクションでは、蛍光イメージングに最も適切な画像撮影セッテイングの助けとなる、シンプルで段階的なワークフローの概要を示します。
顕微鏡カメラの撮影パラメータをセットアップするための6つのステップ
ここに示すのは、蛍光イメージング実験用に顕微鏡カメラを適切にセットアップするための一般的な6つのステップです。最良の手順は、あなた自身のアプリケーションとサンプルによって異なることに留意してください。
- 観察倍率を決定します。
- サンプルに焦点を合わせ、観察ターゲットを見つけます。自動ディスプレイ補正をお勧めします。ライブ画像を観察していないとき、または写真を撮影していないときは、常に蛍光シャッターを閉じておきます。
- カメラを画像撮影に設定します(解像度、露出時間など)。
- 最も弱い励起光強度を試し、背景ノイズよりも高いシグナルを得るまで露出時間を延長します。
- 露出時間が非実用的に長い場合は、段階的に少しずつ強い励起光を試します。
- ヒストグラムをチェックして、飽和がないことを確認します。
これは、ベストプラクティスの簡易なリストに過ぎないことに留意してください。デジタルイメージングに関するより詳細な説明は、ホワイトペーパー デジタル画像データと生物サンプルとの関連性を理解するをご覧ください。
蛍光イメージングでは、常にサンプルとアプリケーションを考慮してください。
最良の画像撮影セッテイングは、最終的に、あなたのサンプルとアプリケーション次第です。サンプルが精巧な場合、弱い励起光が必要な場合があります。一方、高速現象を撮影する必要があるときには、短時間の露出と比較的強い励起光を適用するのが最も効果的かも知れません。いずれにしても、ヒストグラムとディスプレイの調節が、理想的な撮影条件の決定に役立ちます。