Image of the Year Award 2018 ハカン・クヴァーンストレム氏へのインタビュー
ハカン・クヴァーンストレム氏はオリンパスのImage of the Year Award2018で最優秀賞を受賞者されました。
海洋カタツムリの目を見張る蛍光画像について、お話を伺いました。
画像には、藻と細菌の細部と調和する、殻から発するわずかに青い光が映し出されています。全て単一波長からの蛍光で可視化されているのです。
写真の裏話を聞かせていただけますか。
画像はどのように作成されたのですか。
カタツムリを顕微鏡に置いた時、可視光や偏光などいろいろな手法を試してみました。蛍光顕微鏡で紫外線を当てると、美しい色で自己蛍光しているのに気付いたんです。そして数枚の写真を撮りました。
そのカタツムリは非常に小さく、2mm程度の大きさでした。オリンパスのBX51蛍光顕微鏡を使って、10倍の対物レンズとキヤノンの6Dカメラで撮影しました。画像の中に見える色は全て自己蛍光の色です。染色は一切していません。
400nm波長の光の中では、このように見えるのです。
画像の中の赤色は藻です。中には形で種類が分かる藻があるかもしれません。シアノバクテリアの自己蛍光は通常オレンジ色なので、カタツムリの表面にシアノバクテリアが繁殖してるのでしょう。
この賞への応募作品としてこの写真を選んだ理由はなんですか。
顕微鏡の使い方はどこで習われたのですか。
コンピューターエンジニア出身なので、本業では顕微鏡は使いませんが、生物学、物理学や数学など科学にはいつも興味を持っていました。私は、いつも何かを組み立てています。電子機器やコンピューターなどです。
最初の顕微鏡を買ったのは十代の時です。私にとって顕微鏡は、何かを詳しく見たり、それまでに見たことのなかったものを見たりできる、素晴らしい技術的なおもちゃでした。最初の顕微鏡はシンプルでしたが、それでも髪や、ハエ、アリなどの昆虫を観察するのは非常に面白いと思いました。
芸術のツールに顕微鏡を使おうと思った理由はなんですか。
顕微鏡写真には様々な目的があります。研究分野では、例えば標本の一定の特徴を目立たせて、研究結果や定理を証明したり、それを覆したり、あるいは臨床業務では疾病を診断します。画像の美しさは二の次で、見た目を高める努力はされません。しかし私は、最高の品質の写真を写すためだけに、これらの道具を使いたいのです。つまり、その技術を最大限生かして、可能な限り画像の見た目を良くしたいのです。
数年前に新しい顕微鏡を購入しましたが、間もなく、やりたかった事がその顕微鏡ではできないことに気づき、より高度なものを購入しました。それがBX51です。本当に良い装置です。BX51のおかげで、顕微鏡を使った美しい芸術を作成することができました。
ここ数年間で、新しい装置を揃えて自宅の実験室を拡大しており、BX51の微分干渉コントラスト、偏光、位相差、蛍光といった性能と合わせて、様々な視覚効果を得る幅広い手法を試すことができます。
顕微鏡法の何が最も面白いと感じますか。
目で見えるものを超えて見る能力に、いつも心を動かされてきました。天文学でも同じです。裸眼では見えない遠くの星や遠くの銀河を見ることに惹かれます。
水のサンプルを一滴、また一滴と見て、何か新しいものを見つけようとすることには、決して飽きません。ほぼ毎回、それまでに見たことのない何かが見つかります。素晴らしいことに、それは本当に身近にあるのです。人は南極やエベレスト山の素晴らしい写真を撮影するために世界中を旅しますが、身近なものをただ見るだけで驚くような写真が作成できます。
次に何を作成するのか教えてもらえますか。
進行中のプロジェクトはいくつかあります。現在取り掛かっているものの1つは、「duplo illuminata」シリーズの画像です。写真家のスティーブン・ウィルクス氏の、1枚の写真に夜と昼の両方を捉えている「Day to Night」という画像に刺激されたものです。デュアル照明を使って微小な美を捉え、それらを1枚の画像に融合することにしました。
このシリーズの画像には、2つの照明技術を組み合わせて融合画像を作るため、スタックして貼り合わせ、Photoshopで合成した100枚の画像から作成されているものもあります。この手法の課題は撮影を素早くこなすことです。対象が少しでも動いてしまうと、最終画像が駄目になってしまいますから。