顕微鏡の構成と仕様 ~接眼レンズ・鏡筒~
顕微鏡の構成と仕様 ~接眼レンズ・鏡筒~
3.接眼レンズ(OC:Ocular)
3-1.基本仕様
接眼レンズは、対物レンズが結んだ中間像を拡大して見るためのレンズである。
倍率(M:Magnification)
中間像(正立の虚像)を眼で見るときの倍率である。生物顕微鏡では、10xを使うことが多い。倍率の変更は対物レンズの交換で行なうため、あまり頻繁に交換されることはない。
接眼レンズに記されている倍率は、明視距離(250mm)を接眼レンズの焦点距離で割った値である(10xの場合、250÷10=25mm[10×接眼レンズの焦点距離は25mmである]となる)。
アイポイント(Eyepoint)
メガネをかけたままでも観察できるように、アイポイントが接眼レンズから十分距離がある接眼レンズを「ハイアイポイント接眼レンズ」という。

図1 アイポイント
レベルアップ 瞳(Pupil)
図3は、接眼レンズの瞳の位置と光の進路を示している。瞳からずれたり、近すぎたり遠すぎたりすると、光束の一部が眼に入らずに像の端に陰りが出てくる。瞳に眼を合わせることで、接眼レンズからの光束がすべて眼に入り、正しく見ることが可能となる。

図2 対物レンズの瞳

図3 アイポイントに正しく眼の位置が合っている

図4 アイポイントから眼の位置が離れている
視野数(FN:Field Number)
接眼レンズで見ることができる中間像の直径(mm)を「視野数」といい、明視距離でどれだけの範囲が視界に入るかを表している。視野数には、15、18、20、22、25、26.5などがあり、視野数が大きいほど標本の広い範囲を観察することができる。
接眼レンズで実際に観察している視野が、標本上ではどれだけの範囲にあたるかを示したものを「実視野(FOV:Field Of View)」といい、次の式で求めることができる。
たとえば、視野数20、対物レンズの倍率が10xの場合、実視野は2mmとなり、標本上の直径2mmの範囲を見ていることになる。

図5 視野数と実視野

図6 視野数の違いによる見え方の比較
3-2.種類
接眼レンズには、次のような種類がある。
内焦点接眼レンズ
超広視野接眼レンズ

図7 代表的な接眼レンズの写真

図8 焦点板
3-3.表示
接眼レンズの鏡胴面には、種類、倍率、視野数など、レンズ性能を表す記号が記されている。

図9 接眼レンズの表示
チェックポイント
- 観察するときは、全視野が見えるよう眼の瞳をアイポイントに置く
- 視野数とは、接眼レンズで見ることのできる中間像の直径である。視野数が大きいほど広い範囲を観察できる
- 接眼レンズに記された記号から、レンズ性能を知ることができる
4.鏡筒
4-1.鏡筒の種類
鏡筒に取付けできる接眼レンズ数によって、単眼鏡筒、双眼鏡筒、3眼鏡筒がある。

図10 鏡筒(左側スリーブ視度調整用ヘリコイド付き)
瞳孔の間隔や左右の眼の視度差など、観察者の個別状態に合わせて調整できる眼幅調整機構と視度調整機構があり、疲労の少ない両眼視ができる。
光路を左右に分けるプリズムの構造の違いで、双眼鏡と同じ眼幅調整機構の「ジーデントップ型(Seidentopf)」と左右に水平方向に服幅調整する機構の「イエンチ型(Jensch)」の2種類がある。
図11 光路分割プリズムの構造が違う
チェックポイント
- 鏡筒には、単眼鏡筒、双眼鏡筒、3眼鏡筒があり、観察の目的に合わせて使い分ける