顕微鏡の構造による分類 その1 ~照明法による分類~

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顕微鏡の構造による分類 その1 ~照明法による分類~

基礎編では、顕微鏡を用途や形状、観察方法により分類をして説明した。
本編では、照明法による違いと結像方式の違いについて、その光学性能上の特徴を中心に学習する。

1.照明法による分類

顕微鏡は、照明を当てる方法によって「透過型顕微鏡」と「落射型顕微鏡」の2つに分類することができる。

図1 透過型顕微鏡
図1 透過型顕微鏡
図2 落射型顕微鏡
図2 落射型顕微鏡

参考

【観察する試料の状態と適する照明法】

試料の状態と適する照明法は、以下のように大別できる。

1-1.透過型顕微鏡(Transmitted Light Microscope)

透過型顕微鏡の光路図を、正立型顕微鏡を例にして図3に示す。
照明光は試料の下から試料を透過して対物レンズに入る。透過照明では生体組織の薄切切片や細胞、細菌などの観察や鋭利な刃先やエッジ状の端面の観察を行う。

図3 透過型顕微鏡 光路図
図3 透過型顕微鏡 光路図

透過照明では、試料の分光特性や、試料による光の位相の変化、回折・散乱、屈折などを利用して観察する。また、試料が照明光を遮光する影の形を観察できる。試料は光にとって像にコントラストを与えるものであり、各種観察法では観察像に見やすいコントラストを付ける工夫がなされている。

観察法 像にコントラストを与えるもの コントラストにかかわる部位
光源~試料の間 対物レンズ~
接眼レンズの間
明視野観察 試料の分光特性 光が透過するときの波長による透過光強度の違い。振幅標本による光の強度変調 開口絞り
フィルタ
暗視野観察 試料による光の回折、散乱 分解能以下の試料による回折光、散乱光 暗視野コンデンサ
リングスリット
位相差観察 試料による光の位相変化 試料の凹凸による位相勾配や回折光の位相差。位相標本による位相変調 リングスリット 位相板
微分干渉観察 ポラライザ
微分干渉プリズム
1/4波長板
鋭敏色板
微分干渉プリズム
アナライザ
偏光観察 試料による複屈折 高分子や結晶などによる光学的異方性 ポラライザ アナライザ
1/4波長板
鋭敏色板
コンペンセータ
レリーフコントラスト観察
(ホフマンモジュレーション観察)
試料による屈折 媒質(封入)と試料の凹凸による屈折率分布の違い 矩形スリット
モジュレータ
ポラライザ
モジュレータ
分散染色観察 試料の屈折率分散と媒質の屈折率分散の違い リングスリット 遮光マスクリング

1-2.落射型顕微鏡(Reflected Light Microscope)

落射型顕微鏡の光路図を、正立型顕微鏡を例にして図4に示す。
試料が光を通さないため、対物レンズ側から試料に照明をする方法で、対物レンズがコンデンサの役割を担っている。

図4 落射型顕微鏡 光路図
図4 落射型顕微鏡 光路図

試料に照明光を当てると、光の反射率や吸収率の違いで像にコントラストが付いたり、わずかな凹凸によって反射光の位相が変わったり、回折・散乱が生じたりする。光は試料によって変化し、像にコントラストを与えるものとなる。落射照明では、これらの光の変化を利用して観察している。

観察法 像にコントラストを与えるもの コントラストにかかわる部位
光源~試料の間 対物レンズ~
接眼レンズの間
明視野観察 試料の反射分光特性 光が反射するときの波長による反射光強度の違い。反射型振幅標本による強度変調 開口絞り
フィルタ
ポラライザ
1/4波長板
アナライザ
暗視野観察 試料の反射光の回折、散乱 分解能以下の試料による回折光、散乱光 リング照明ミラー
微分干渉観察 試料の凹凸による光の位相変化 反射型位相標本による位相変調 ポラライザ
鋭敏色板
微分干渉プリズム
微分干渉プリズム
アナライザ
簡易偏光観察 試料による複屈折 強磁性体などによる光学的異方性や旋光性 ポラライザ
鋭敏色板
アナライザ
蛍光観察 試料の蛍光発光 試料に標識した蛍光色素、蛍光タンパク質の蛍光 NDフィルタ
励起フィルタ
ダイクロイックミラー
ダイクロイックミラー
吸収フィルタ

※2×、1.25×対物レンズの明視野観察時に使用する。レンズ面反射によるノイズ光をカットする。

用語解説

図6 透過照明と振幅標本
図6 透過照明と振幅標本
図7 落射照明の強度変調
図7 落射照明の強度変調

位相変調
試料を透過、又は試料で反射した光の位相が変わること。

図8 透過照明と位相標本
図8 透過照明と位相標本
図7 落射照明の強度変調
図9 落射照明の位相変調