光ディスクのデータ復旧
概要
科学捜査の現場では、証拠となる情報が記録された光ディスクが壊れてしまっている、ということがよくあります。このような問題に対し、アメリカ国立科学財団(NFS)の資金支援を受けた研究プロジェクトは、損傷したメディアからデータを復旧する技術の研究に取り組んできました。
オリンパスのレーザー顕微鏡LEXT OLS4100
データ復旧の方法
図1 損傷している、家庭で書き込んだCDの画像
ピットとランド(エンコードされたデータ)が、灰色の上の白い点と線として見えます。これらのパターンが0と1に変換され、それらをデコードすることにより元データを復元します。
図2 デコード用に選択された点と線の連なり
まず各点、線を測定し、その結果を変換アルゴリズムを使って逆変換します。逆変換には、メディアに書き込む際に元データを点と線に変換するのに使用した変換アルゴリズムを使用します。一般的に使用されている変換アルゴリズムはほとんど公開されています。これらのアルゴリズムでは、データは暗号化されず、むしろ単に符号化されるだけです。それは、情報を効率的かつ冗長に保存するためですが、この冗長性がデータの復旧には重要です。データが冗長であるということは、一部のデータが壊れても、その分のデータがすべてだめになってしまうとは限らないということです。従って、メディアが一部しか残っていない場合でも、多くの元データを復旧できる可能性が高くなります。
図3 ばらばらに割れた光学ディスクの画像
私たちが特に注目しているのは、故意に破壊されたメディア、例えばばらばらの破片となったディスクです。なぜなら、このような場合、データの「容器」が壊れただけで、中のデータは無傷で残っていることが多いからです。図3はそのようなディスクの例で、目視では、データへの外傷による大きな影響はないように見えます。OLS4100を使えば、データパターンを測定して、データへの影響の有無を確認することができます。影響がある場合でも、損傷の影響を考慮するようアルゴリズムを調整した上で、測定値に基づいてデータを復旧することができます。
高倍率で撮影することで精密な測定結果が得られ、それによってデータの分析と復旧の可能性が向上します。図4は、光ディスクのデータを高解像度、最高倍率で撮影した画像です。
本稿の執筆時点では、手作業でデコードを行いデータを復旧しています。現在は、この過程をコンピュータープログラムにより自動化するために、さまざまな開発が行われています。データ復旧の可能性を評価するにあたり、光ディスクからの情報収集するために使用している装置がOLS4100です。OLS4100では、光ディスクから利用可能な情報を得るために重要な3D画像の構築や3D測定が可能です。図5は光ディスクに保存されたデータの3D画像です。
図4 破損したDVDの17120倍最大ズーム画像
図5 光ディスク上のデータの3D画像
まとめ
われわれの研究の狙いは2点あります。一つは、失われると思われたデータを復旧することです。もう一つは、ちょうどその反対です。データ復旧を可能にする特徴を理解することによって、データ復旧ができないように保護技術を適合させることができるのです。例えば、紙文書を破棄する一般的な方法は燃やすことでした。しかし科学捜査技術が発達し、文書の燃えかすからも情報の復旧が可能になりました。その結果、文書破棄の技術は改良され、それが将来の科学捜査技術へとつながっています。
損傷した光ディスクから十分なデータを復旧させるための課題がすべて解決されたわけではありませんが、可能な技術を高めるという点では前進しています。
われわれの研究はアメリカ国立科学財団の支援を受けています(認可番号No.1116268)。本稿に記載された意見、知見、結論、および推奨事項は著者によるものであり、必ずしもアメリカ国立科学財団の考えを反映したものではありません。
グレッグ・ゴッグリン、博士(フェリス州立大学)
ジェームス・ジョーンズ、博士(ジョージメイソン大学)
デレク・ブラワー、理学修士(フェリス州立大学)
関連製品
LEXT OLS5100
LEXT OLS5100は、非接触・非破壊で微細な3D形状の観察・測定が可能なレーザー顕微鏡です。 サブミクロンオーダーの微細な形状測定に優れ、スタートボタンを押すだけでオペレーターの習熟度に左右されない測定結果を得ることができます。 また、新開発の『実験トータルアシスト』により、実験計画作成からデータ取得・解析、分析・データ出力までを一括管理することで、人為的なミスを低減し、手戻りを防ぎます。ISO/IEC 17025認定校正に対応しています。