表面粗さ測定ー用語解説・その他資料
工業用顕微鏡
表面粗さを測定できる様々な測定機
表面粗さを測る測定機として、接触式と非接触式とに分類できます。
それぞれメリット、デメリットがあるので測定対象物に応じて、測定機を選択することがポイントです。
概要
表面粗さを測定できる様々な測定機表面粗さを測る測定機として、接触式と非接触式とに分類できます。 |
方式 | 測定機 | メリット | デメリット |
接触式 | 触針式表面粗さ測定機 |
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非接触式 | 白色干渉計 |
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レーザー顕微鏡 |
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デジタルマイクロスコープ |
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走査型プローブ顕微鏡(SPM) |
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触針式では、柔らかいサンプルを探針が削り取ってしまう |
数十ミクロンのワイヤー表面に探針を下ろすことは |
カミソリ 128×128μm |
ダイヤモンドバイト 512×512μm |
解決策
- レーザー顕微鏡は、レーザー光を平面方向に高速にスキャンするため、サブミクロンレベルの微細形状が数十秒で取得可能です。
- レーザー顕微鏡は、サブミクロンレベルの凹凸を、SPMよりも広い視野で測定可能です。取得データを平面方向に繋ぎ合わせることでさらに広い視野での解析も可能となります。
輪郭曲線方式 | 三次元方式 | |
表面性状 パラメーター |
ISO 4287:1997(JIS B0601:2013) | ISO 25178-2:2012(JIS B0681-2:2018) |
ISO 13565:1996(JIS B0671:2002) | ||
ISO 12085:1996(JIS B0631:2000) | ||
測定条件 | ISO 4288:1996(JIS B0633:2001) | ISO 25178-3:2012(JIS B0681-3:2019) |
ISO 3274:1996(JISB0651:2001) | ||
フィルター | ISO 11562:1996(JIS B0632:2001) | ISO 16610シリーズ(JIS B0635:2018) |
測定機の分類 | - | ISO25178-6:2010(JIS B0681-6:2014) |
測定機の特性 | ISO 3274:1996(JISB0651:2001) | ISO25178-602 ~ 607 |
測定機の校正 | ISO 12179:2000(JIS B0670:2002) | ISO原案 作成中 |
校正用標準片 | ISO 5436-1:2000(JIS B0659-1:2002) | ISO25178-70:2013 |
図示法 | ISO 1302:2002(JIS B0031:2003) | ISO25178-1:2016(JIS B0681-1:2023) |
断面曲線(Primary profile)
測定断面曲線にカットオフ値λsの低域フィルターを適用して得られる曲線。断面曲線から求めた表面性状パラメーターを断面曲線パラメーター(Pパラメーター)と呼ぶ。
粗さ曲線(Roughness profile)
カットオフ値λcの高域フィルターによって、断面曲線から長波長成分を遮断して得た輪郭曲線。粗さ曲線から求めた表面性状パラメーターを粗さ曲線パラメーター(Rパラメーター)と呼ぶ。
うねり曲線(Waviness profile)
断面曲線にカットオフ値λfおよびλcの輪郭曲線フィルターを順次適用することによって得られる輪郭曲線。λfによって長波長成分を遮断し、λcによって短波長成分を遮断する。うねり曲線から求めた表面性状パラメーターをうねり曲線パラメーター(Wパラメーター)と呼ぶ。
輪郭曲線フィルター(Profile filter)
輪郭曲線の波長成分を長波長成分と短波長成分とに分離するフィルター。次の3種がある。
- λsフィルター:粗さ成分とそれより短い波長成分との境界を定義するフィルター
- λcフィルター:粗さ成分とうねり成分との境界を定義するフィルター
- λfフィルター:うねり成分とそれより長い波長成分との境界を定義するフィルター
カットオフ値(cut-off wavelength)
輪郭曲線フィルターにおける境界波長。振幅の透過率が50%になる波長。
基準長さ(Sampling length
輪郭曲線の特性を求めるために用いる輪郭曲線のX軸方向の長さ。
評価長さ(Evaluation length)
輪郭曲線のX軸方向の長さ。
輪郭曲線方式の概念図
表面性状曲面(Scale limited surface)
三次元表面性状パラメーターを求めるための基礎となる曲面データ。S-F曲面又はS-L曲面。輪郭曲面と呼ぶ場合もある。
輪郭曲面フィルター(Areal filter)
輪郭曲面の波長成分を長波長成分と短波長成分とに分離するフィルター。作用に応じて次の3種がある。
- Sフィルター(S filter):輪郭曲面から小さい波長成分を除去するフィルター
- Lフィルター(L filter):輪郭曲面から大きい波長成分を除去するフィルター
- F演算(F operation):形状成分(球や円筒など)を除去するための当てはめ演算又はフィルター
注)標準的にはSフィルター、Lフィルターとしてガウシアンフィルター、F演算として最小二乗法による当てはめ演算が用いられる。
ガウシアンフィルター
輪郭曲面フィルターの一種であり三次元方式で標準的に用いるフィルター。ガウス関数で与えられる重み関数との畳みこみ演算によりフィルターを実現する。振幅の等価特性はネスティングインデックスの値で50%に減衰する特性を持つ。
スプラインフィルター
輪郭曲面フィルターの一種でありガウシアンフィルターに比べデータ端部での歪みが少ないとされる。
ネスティングインデックス(Nesting index)
輪郭曲面フィルターにおける境界波長を表わすための指標。ガウシアン輪郭曲面フィルターを用いる場合のネスティングインデックスは長さの単位で指定され、この場合は輪郭曲線方式におけるカットオフ値と等価な意味合いとなる。
S-F曲面(S-F surface)
Sフィルターによって小さい波長成分を除去した曲面から、F演算によって形状成分を除去した曲面。
S-L曲面(S-L surface)
Sフィルターによって小さい波長成分を除去した曲面から、Lフィルターによって大きな波長成分を除去した曲面。
評価領域(Evaluation area)
特性評価を行うために規定した表面性状曲面の一部。指定が無い限り評価領域は正方形である。
三次元方式の概念図
1. 下表から測定したい項目(粗さ、うねり、段差)に適した対物レンズ(◎, ○)の中で、作動距離W.D.の値が標本と対物レンズの接近可能な距離以上である対物レンズの候補を選択します。
2. 候補に挙げた対物レンズを使って測定対象物を観察した時に、主要な形状成分(表面の特性を決定すると思われる最も支配的な形状成分)が観察視野内に十分な数(X,Y各方向に主要形状成分の5倍以上を推奨)が含まれる対物レンズを本採用します。
- 条件を満たす対物レンズが複数ある場合には、なるべく開口数N.A.の大きいものを選択します。
- 条件を満たす対物レンズが存在しない場合、△印の対物レンズも含め再選定するか、貼り合わせ機能を使って測定領域を拡大することを検討します。
対物レンズ | 仕様 | 測定項目 | |||||
開口数 (N.A.) |
作動距離 (W.D.) (単位:mm) |
集光スポット径* (単位:μm) |
測定領域** (単位:μm) |
粗さ | うねり | 段差 (Z) |
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MPLFLN2.5X | 0,08 | 10,7 | 6,2 | 5120 x 5120 | X | X | X |
MPLFLN5X | 0,15 | 20 | 3,3 | 2560 x 2560 | X | X | X |
MPLFLN10XLEXT | 0,3 | 10,4 | 1,6 | 1280 x 1280 | X | ○ | △ |
MPLAPON20XLEXT | 0,6 | 1 | 0,82 | 640 x 640 | △ | ○ | ○ |
MPLAPON50XLEXT | 0,95 | 0,35 | 0,52 | 256 x 256 | ◎ | ○ | ◎ |
MPLAPON100XLEXT | 0,95 | 0,35 | 0,52 | 128 x 128 | ◎ | ○ | ◎ |
LMPLFLN20XLEXT | 0,45 | 6,5 | 1,1 | 640 x 640 | △ | ○ | ○ |
LMPLFLN50XLEXT | 0,6 | 5 | 0,82 | 256 x 256 | △ | ○ | ○ |
LMPLFLN100XLEXT | 0,8 | 3,4 | 0,62 | 128 x 128 | ○ | ○ | ◎ |
SLMPLN20X | 0,25 | 25 | 2 | 640 x 640 | X | ○ | △ |
SLMPLN50X | 0,35 | 18 | 1,4 | 256 x 256 | X | ○ | △ |
SLMPLN100X | 0,6 | 7,6 | 0,82 | 128 x 128 | △ | ○ | ○ |
LCPLFLN20XLCD | 0,45 | 7,4-8,3 | 1,1 | 640 x 640 | △ | ○ | ○ |
LCPLFLN50XLCD | 0,7 | 3,0-2,2 | 0,71 | 256 x 256 | ○ | ○ | ○ |
LCPLFLN100XLCD | 0,85 | 1,0-0,9 | 0,58 | 128 x 128 | ○ | ○ | ◎ |
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** OLS5000を用いた場合の標準的な値です。
○ : 適しています
△ : 条件によっては使用できます
X : 適していません
表面性状の解析で使うフィルターの機能、フィルターの組合せ、フィルターサイズについて説明します。これらフィルターは解析の目的に応じて、条件設定を行います。
輪郭曲面フィルター(Areal filter)
表面性状パラメーターの解析を行う場合、目的に応じて取得した表面形状データに対して3つのフィルター(F演算、Sフィルター、Lフィルター)の適用を検討します。
F演算(形状除去) | Sフィルター (Short-cut filter) |
Lフィルター (Long-Pass filter) |
球、円筒、曲面などの標本の呼び形状成分を除去します | 測定ノイズや細かな形状成分を除去します | うねり形状成分を除去します |
フィルターの組み合わせ
3つのフィルター(F演算、Sフィルター、Lフィルター)の組合せは全部で8通りあります。
下表の用途欄を参考に、適用するフィルターの組合せを選択します。
- : 適用しない
○ : 適用する
フィルターのサイズ(ネスティングインデックス)
フィルターの強さ(形状の分離能力)をネスティングインデックスと呼びます。(Lフィルターは慣習的にカットオフと呼ぶ場合があります)
- Sフィルターはネスティングインデックスが大きいほど、細かな形状成分が強く除去されます。
- Lフィルターはネスティングインデックスが小さいほど、うねり形状成分が強く除去されます。
ネスティングインデックスは、…,0.5, 0.8, 1, 2, 2.5, 5, 8, 10, 20,…の数値系列の値を用いることが推奨されますが、次のような制約もあります。
- Sフィルターのネスティングインデックスは光学的な分解能(≒集光スポット径)以上、かつデータのサンプリング間隔の3倍以上の値を設定する必要があります。
- Lフィルターのネスティングインデックスは測定領域の大きさ(矩形の短辺の長さ)よりも小さな値に設定する必要があります。