アプリケーションノート
工業用顕微鏡を用いたパシュミナウールの定量分析
パシュミナとは、カシミヤヤギから採れるカシミヤウールの最も細い種類のことで、その太さは人間の髪の毛の10分の1です。検査官は、製造中にこの高級繊維を分析して製品品質を確認しなければなりません。
しかし、パシュミナウールとその他の動物繊維との配合物について組成を分析するのは困難です。多くのウール繊維で、直径とスケール密度などの表面特性が共通しているため、区別する難易度が高くなっているのです。
ここで我々は、パシュミナを定量化分析する2つの一般的な方法、すなわち光学顕微鏡と走査型電子顕微鏡について検討してみることにします。
方法1:光学顕微鏡を使用する
光学顕微鏡法では、検査官がスケール構造とその他の表面特性を観察することによって、拡大されたパシュミナ繊維を識別する必要があります。検査官はこれら識別のための特徴について、AATCC-20AやASTM-D629などの織物分析基準で知識を深めることができます。しかし、これらの特徴を光学顕微鏡で観察することは困難です。多くの光学顕微鏡の解像度は約0.35ミクロンが限界なうえに、被写界深度が浅い(約1~2ミクロン)ため、線維の特徴の一部はイメージング中も焦点がずれたままになってしまいます。顕微鏡の透過光は、線維の両側にあるスケールの陰影との干渉を生じることもあります。
方法2:走査型電子顕微鏡を使用する
光学顕微鏡とSEM顕微鏡が抱える課題を克服するソリューション
オリンパスは、従来の光学顕微鏡とSEM技術が持つ共通の課題を克服する、直感操作によるワークフローを提供しています。このワークフロー実現のために、当社はオリンパスの工業用顕微鏡BX53Mを使用して、微分干渉コントラスト(DIC)観察法による反射光でパシュミナ繊維のスケールを観察しました。過剰な反射を防ぐため、水の付着力を使ってパシュミナウール繊維をスライドガラスにセットしました。このステップのために、少量の水または蒸気をスライドガラスに擦りつけて、微小な水滴を付着させました。次にウール繊維をスライドガラスに乗せ、繊維を約0.1 cm引きずって真っ直ぐにしました。最後に、約1分間乾燥させました。パシュミナウール繊維をDIC観察法で見るには、視野絞り(FS)と開口絞り(AS)の設定を最適にすることが重要です。我々はASを最小にし、FSを調節して過剰な反射を抑制しました。全焦点イメージング(EFI)機能をオリンパスアポクロマート対物レンズと組み合わせて使用することにより、ウールの円筒状の表面全体の細い輪郭を含めて、繊維を完全に焦点内に捉えることができました。これらの正確な画像は10分未満で取得することができ、顕微鏡のウォーミングアップも不要でした。