DSX1000マイクロスコープによるグラビアシリンダー製版QCの精度、速度、効率の改善方法:カスタマーレビュー
シンク・ラボラトリー開発部部長 菅原申太郎氏
シンク・ラボラトリー開発部チームメンバー 吉岡孝氏
シンク・ラボラトリー(千葉県柏市)は、全自動グラビアシリンダー製版システムを製造しており、そのシステムは主に食品など商品のパッケージ印刷に活用されています。 顧客には、グラビアシリンダー供給会社と印刷会社が含まれます。
レーザー彫刻プロセスの前にラックに並べられたグラビアシリンダーの図
シンク・ラボラトリーのグラビアシリンダー製版システムは、レーザーベースのマスクレスフォトリソグラフィを使用して、印刷シリンダーを製造します。 3200 × 12800 dpiの高解像度レーザービームをシリンダーの2 μm × 8 μmの領域に集束させて、小さなハニカム構造のセルを形成します。このセルがインクを集めて印刷画像を作り出します。 平均的に、CMYK(シアン、マゼンタ、黄色、黒色)セルは深度12~15 μm、白色セルは深度15~16 μmであり、最も小さいセルは100 μm × 100 μmほどです。 このようにセルの寸法が小さいため、ラベル製造プロセスが溶剤とインクの面で経済的です。
現代の輪転グラビアプロセスの高速性と精度
かつて、彫刻プロセスは手動で行われため、時間がかかりました。 シンク・ラボラトリーの全自動グラビアシリンダー製版システムでは、1つのシリンダーの製造にかかる時間は約1時間です。 完成したシリンダーはグラビア印刷機に設置され、ロール状になるラベルまたはパッケージの連続物の製造に使用されます。 印刷速度は1分あたり200~400メートル(656~1312 fpm)に達します。 このような高速印刷においても、シンク・ラボラトリーのシリンダーは優れた密度と高い色彩安定性を維持します。
シリンダー彫刻仕様の誤差はわずか1%でも、印刷ラベルのテキストや色の不鮮明さによるエラーが発生する可能性があります。 シンク・ラボラトリー製シリンダーで印刷したサンプルについて、お客様から欠陥が報告された場合、そのグラビアシリンダーと印刷サンプルを回収して、欠陥の原因を調査します。 求められる精度は1 μm以上です。
DSX1000デジタルマイクロスコープに切り替えた理由
オリンパスのDSX1000デジタルマイクロスコープが2019年6月に発売されたとき、シンク・ラボラトリーはそれを品質管理(QC)プロセスに組み込むことを決めました。 会社で既に他のオリンパス検査製品(蛍光X線分析計やボアスコープなど)を使用しており、 シンク・ラボラトリーの社長であり長年のオリンパスカメラユーザーでもある重田龍男氏が、光学技術の知識に長けているためでした。
最小精度1 μmという重大な要件の1つがDSX1000デジタルマイクロスコープによって達成できたことも決定打となりました。 他のいくつかの機能によって、品質管理プロセスの効率が改善される可能性もあります。
DSX1000マイクロスコープを使用して1年ほど経った頃、開発部リーダーの菅原申太郎氏と、開発部チームメンバーであり主なユーザーである吉岡孝氏は、機器の操作性と性能についての意見を求められました。
品質管理プロセスの予備診断ツールである、DSX1000デジタルマイクロスコープ用シンク・ラボラトリーワークステーションの前に立つ吉岡孝氏
顧客の高い規格に応えるためのシンク・ラボラトリーの強化
化粧品会社や自動車会社を始めとするシンク・ラボラトリーのグラビアシリンダーのユーザーは、高級感を表す品質水準を求めることがよくあります。 「近年、高品質印刷の需要が高まっており、より精度の高い分析の追求と、より高い効率への期待から、DSX1000マイクロスコープを導入することになったのです」と吉岡氏は話します。
「品質管理はわが社の生命線の1つと言っても過言ではありません」菅原氏は言います。 「さらに高度な印刷ニーズに応えるために、絶え間なく精度の向上に努めています」。
DSX1000マイクロスコープは、顧客から欠陥を報告されると真っ先に使用される分析ツールです。 6つの観察法(明視野(bf)、偏斜、暗視野(df)、MIX、偏光、微分干渉)に対応するDSX1000マイクロスコープの操作しやすさは重要な利点です。 吉岡氏が評価するのは、 1クリックで6つの観察法を簡単に切り替えられ、サンプルを見失うことがない点です。 複数のプレビュー機能の便利さも強調しました。この機能を使用すると、さまざまな観察法で得られた画像をすべて一度に画面上で比較し、最もよいものを選択できます。
「各サンプルに最も効果的な観察法を、表示される画像から選択できます。 この機能はとても便利です。 従来のマイクロスコープでは、2種類の画像、つまり、レポートに使用するため外観に重点を置いた画像と、欠陥分析の実施に適した画像をキャプチャするたびに、観察条件を正確に調整する必要があります。 DSX1000マイクロスコープではこの調整が不要なので、分析の実行からレポート作成までのタスクにかかる膨大な時間を節約できます」と吉岡氏は述べました。
技術者のラボ作業を楽にする実用的機能
吉岡氏がサンプル分析タスクに関して気付いた もう一つの実用的な点は、レンズ交換メカニズムです。 「サンプル交換時や、別の倍率のレンズに変えたい場合に、すぐ切り替えられるのは便利です。 場合によっては、低い倍率のレンズでサンプル全体を観察する方が、欠陥の原因を見つけやすいことがあります。どんなサンプルを観察・分析するときにも便利な機能です。 従来のデジタルマイクロスコープでは、レンズ交換時にレンズを穴にねじ込む必要があり、この作業は厄介で時間がかかります。一方、DSX1000マイクロスコープのスライドメカニズムではレンズ交換が簡単になり、レンズを落とす心配がなくなりました」。
菅原、吉岡の 両氏とも、 オリンパスが提供する最大17種類の高品質で豊富な対物レンズのラインアップに、コストパフォーマンス面で満足の意を表しました。
DSX1000マイクロスコープで撮影された各画像には、倍率、照明法、カメラ設定などの観察条件に関する情報が含まれています。 これらの条件は、画像をクリックするだけで取得できます。
この機能が 吉岡氏や同僚にとって時間の節約になるのは、特にこのマイクロスコープを使用するオペレーターが複数いる場合です。 最適な観察条件をその都度調整する必要がないため、より効率的で効果的な分析を行えます。
ラベル印刷のデジタル化は目の前
顧客のニーズを満たす柔軟なソリューションを提供するため、シンク・ラボラトリーは、グラビアシリンダーシステムと並行して機能するインクジェット印刷システムを開発しました。 幸い、DSX1000マイクロスコープがもたらす利点は、現在と将来のあらゆるサンプルタイプの品質管理に適用できます。
菅原氏は最後にこう話しました。 「グラビア印刷のデジタル化は目の前に来ています。 当社はインクジェットプリンターとレーザー印刷を促進するための取り組みを加速していきます。 高精度を求める声が市場で高まっているので、それに応えるために精度管理を高めるよう努力し続けます」。 この高品質印刷を求め続ける姿勢こそ、DSX1000デジタルマイクロスコープがシンク・ラボラトリーにとって重要なツールであり続ける所以です。
シンク・ラボラトリーのFXIJインクジェット印刷システム