コンパクトな装置設計を実現する光学系のレイアウト方法
従来、顕微鏡や結像装置は大型でしたが、近年の設計技術によって小型化が進んでいます。しかし、システムの⼩型化は重大な課題を生みます。小型装置の中にどのように光学系をレイアウトするべきかということです。
ライフサイエンス研究、医療、工業分野に光学製品を提供する主要企業である当社にあっては、この話題は顕微鏡ベースのイメージング機器メーカーとの議論でよく話題になります。今回は、どのようにすれば光学系をコンパクトにレイアウトできるかお話します。
コンパクトな光学系をレイアウトするために重要なポイント
対物レンズからカメラの像面までの光学系(結像光学系)は、次の3つで構成されます。
- 対物レンズ:標本に近接します。
- 結像レンズ:対物レンズから射出された光束を結像させます。
- カメラアダプター:カメラへ適切な倍率で像を投影します。
複数ある選択肢から、機器の目的に応じて適切なユニットを組み合わせることが大切です。部品ごとに考慮する要素について説明します。
1. 対物レンズ
NA、色収差補正、フラットネスの3要素を高度なレベルで実現したX Lineシリーズをはじめ、100種類以上のオリンパスUIS2対物レンズをご用意しています。これらの対物レンズは同焦距離45 mm、コンペンゼーションフリーを基本思想として設計されており、コンパクトな装置に搭載しやすい設計となっています。また、X Lineを含む一部の対物レンズには波面収差コントロールを適用しています。
対物レンズセレクターをお使いいただければ、NAや倍率、カバーガラスの有無、油浸、色収差等の重要なパラメーターでフィルタリングすることや、性能比較しながら用途に合わせた対物レンズを見つけることができます。
2. 結像レンズ
下の表1に示すように、5種類の結像レンズから選択できます。どのユニットもコンペンゼーションフリー方式の設計です。U-SWATLUはイメージサークル26.5 mmと超広視野に対応しているため、X Lineとの組み合わせにおすすめです。
表1:結像レンズの仕様
3. カメラアダプター
投影倍率の違いにより、U-TV1XC、U-TV0.63XC、U-TV0.5XC-3、U-TV0.35XC-2の4種類をご用意しています。お客様が使用するカメラの撮像素子のセンサーサイズに応じて、必要な実視野を選択していただきます。
低倍広視野を観察できるコンパクトな装置を作るために
近年、ライフサイエンス分野では、低倍広視野を観察できるコンパクトな装置を作るニーズが増えています。
今回は、X Lineシリーズの中でも代表的な低倍の対物レンズUPLXAPO4Xを用いて、どこまで短い結像光学系を構成できるかを考えてみます。このプロセスは4ステップで完了できます。
図1:光学系の基本レイアウト
1. 視野を決定する
OFN(対物レンズ視野数)を対物レンズの倍率で割った値が、標本面で撮影できる最大範囲です。今回は、OFN 26.5のUPLXAPO4Xを利用しますので、標本面において撮影できる範囲は26.5 / 4 = φ6.625 mmです。また、当社UIS2対物レンズはAの距離(同焦点距離)は45 mmになるよう設計されています。
2. 結像レンズを選択する
UPLXAPO4XはOFN 26.5の対物レンズなので、結像レンズもイメージサークル26.5 mmに合わせることで、対物レンズの性能を遺憾なく発揮させることができます。そのため、X Lineと組み合わせる結像レンズユニットはU-SWATLUがおすすめです。この組み合わせなら、撮像素子の中心でも周辺でも鮮明で均質な画像を取得できます。
3. カメラアダプターを選択する
次にカメラアダプターを選択します。表2に記載したように、カメラアダプターにそれぞれ縮小倍率を与えると、像面までの距離(Cの距離)を短くすることが可能です。0.35倍のカメラアダプターと組み合わせることで、最も短い光学系を構成できます。
1x
0.63x
0.5x
0.35x
表2:結像レンズとカメラアダプターを組み合わせた際のCの距離
「使用するカメラセンサーの対角長」÷「アダプター倍率の値」が、結像レンズのイメージサークルよりも大きな値にならないように、アダプター倍率を選択することが重要です。
例えば、結像光学系全長の制約から0.35倍のカメラアダプターを選択し、1/1.8インチカメラ(対角長9 mm)と組み合わせるとします。この場合、9を0.35で割って比較する値(25.7)を算出します。
22 < 9 / 0.35 = 25.7 < 26.5
したがって、結像レンズユニットにはU-TLUではなくU-SWATLUを選択する必要があります。
図2:カメラセンサーサイズと結像レンズのイメージサークル
4. Bの距離を決定する
ここまでの1~3で、結像光学系に必要なユニットを選択しました。最後に残るパラメーターとして、Bの距離を決定します。
いずれのUIS2対物レンズも、無限遠補正光学系・コンペンゼーションフリーで設計されているので、Bの距離はお客様のご希望に応じて変更することが可能です。
当社では、U-SWATLU結像レンズの場合、Bの長さとして65 mm~170 mmを推奨しています。今回はコンパクトな装置を構成するために65 mmを選択しましたが、目的のレイアウトに応じて別の長さを選択できます。例えば、落射照明用の光学系を挿入するためにもう少し距離を長くすることができます。
コンパクトな光学系の設計に関するまとめ
以上1~4により、図3のように全長217 mmの結像光学系を構成することができました。UIS2対物レンズ、結像レンズユニット、カメラアダプターをうまく組み合わせることで、コンパクトな装置に向けて、短い光学系を設計できます。
図3:全長217 mmのコンパクトな結像光学系の図
忘れがちなのが、カメラ自体の大きさ(図1のDの距離)です。一般的に高感度カメラは冷却装置を必要とすることから、物理的に大きくなりがちです。この大きさを加味した光学系全長(L)を設定することが大切です。
編集者注記:この記事は、2021年3月に公開された初稿を、最新の仕様に合わせて改訂したものです。