暗視野顕微鏡には、未染色の透明標本のコントラストを高めるための照明技術が起用されています。 斜光照明を用いることで直射光を遮断し、散乱光・回折光・屈折光のみが顕微鏡の対物レンズに入るようにします。 その結果、明るく照らされた標本が暗い背景に浮かび上がります。
この高いコントラストにより判別しにくい背景の試料も比較的少ない労力で際立たせることができるため、通常の照明条件下ではうまく画像化できない試料の観察に非常に貴重なツールです。
暗視野顕微鏡の仕組み
暗視野顕微鏡は中心光を遮断し、試料に斜めの角度から光を当てることで機能します。 コンデンサー内の不透明な絞りによって直射光が遮断されるため、散乱光、回折光、または屈折光のみが対物レンズに入り、暗い背景に明るい試料像が浮かび上がります。
そのプロセスの詳細は以下のとおりです。
- 中央光の遮断: 不透明な絞りが試料を直接通過する光や試料の周囲を通過する光を遮断します。
- 斜光照明: 単純なアッベ暗視野コンデンサーの上部レンズは球面凹面です。 これにより、コンデンサーの表面から出た光が試料面に集束された逆円錐状の空洞光を形成します。
- 散乱光の対物レンズへの入射: 試料をスライドガラスに載せると、斜光線が試料と相互作用します。 試料中の要素(細胞膜や細胞内小器官など)は、光を回折・反射・屈折させて対物レンズに導きます。
- 暗い背景: 試料のない領域には斜光線が交差して対物レンズに届かず、完全に暗くなります。
暗視野顕微鏡の用途
暗視野顕微鏡は、主に明視野観察では十分なコントラストが得られない透明な試料や未染色の試料の観察に用いられます。 輪郭、エッジ、境界、屈折率勾配を明らかにするのに非常に効果的です。
一般的な用途として以下があります。
- 生物試料: 生きた水生生物、細菌、酵母、原生動物、組織培養細胞。
- 構造の詳細: エッジ、境界、毛髪や繊維などの表面の特徴。
- 非生物試料: 鉱物結晶、化学結晶、コロイド粒子、粉塵計数試料、微小な介在物や多孔性の違いを含むポリマーやセラミックスの薄片。
暗視野画像の例
一般的に、適切な暗視野照明の条件下で観察された試料は非常に魅力的に映ります。 こちらは暗視野法で撮影された印象的な試料の例です。
蝶の翅の鱗屑
蝶の羽の表面を飾る微細な鱗屑を示した暗視野画像。 鱗屑は暗視野サブステージコンデンサーで照明され、低倍率(50倍)で撮影されました。
珪藻
Evidentの顕微鏡でMortimer Abramowitzが撮影したクモノスケイソウ Arachnoidiscus ehrenbergi の暗視野画像です。 顕微鏡スライドと対物レンズおよびコンデンサー前面レンズの間に浸漬油を入れ、高NA暗視野コンデンサーで照明されました。
液晶DNA
液晶DNAの暗視野顕微鏡画像。 この高濃度のDNA溶液は、一連の液晶相転移を経て高密度に充填された六方晶相を形成しています。 10倍の対物レンズを備えた複合光学顕微鏡で撮影されました。
アルミニウム・シリコン合金
GX53金属顕微鏡で撮影された研磨されたアルミニウム・シリコン合金の暗視野顕微鏡画像です。
暗視野顕微鏡と明視野顕微鏡の比較
暗視野顕微鏡と明視野顕微鏡の違いを理解すると、試料に最適な手法を選べるようになります。 これら顕微鏡の比較の簡単な手引きを以下に示します。
暗視野顕微鏡の利点と欠点
暗視野照明は素晴らしい画像を生み出しますが、その利点と欠点を慎重に検討することが重要です。
利点
- 高コントラスト: 高いコントラストを提供するため、背景が複雑でも試料を容易に観察することができます。
- 低コントラストの透明の試料に最適: 明視野ではほとんど見えない試料に最適です。
- 最小限の染色: 複雑な染色手順を踏まずに試料を観察することができます。
- 生体試料の観察に有用: 染色する必要がないため、生きた水生生物や細胞を自然な状態で観察することができます。
- 視覚的に印象的な画像: 画像が芸術品のように見えることが多くあります。
欠点
- 試料内の詳細がよく見えない: 試料の内部の詳細な観察にはあまり適していません。
- 破片や汚染物質に敏感: スライド上の塵やゴミの粒子がすべて照明され、画像の品質が低下します。
- 位置合わせが必要: コンデンサーは、視野の中央に照明のムラや暗い部分が生じないように、完全に位置合わせと焦点合わせを行う必要があります。
- 暗くなる場合がある: 照明円錐を形成するために多くの光が遮られるため、十分な光量が必要です。
- 対物レンズの制限: すべての対物レンズが適しているわけではなく、特に十分な開口数(NA)を備えていないコンデンサーインサートを使用する場合はなおさらです。
暗視野顕微鏡検査における染色の必要性
暗視野顕微鏡検査では通常、染色は必要ありません。 暗視野顕微鏡は、通常の明視野条件では見えにくい透明で染色されていない低コントラストの試料の観察に非常に適しています。 実際、染色を避けることで、研究者は水生生物や細胞培養などの生きた試料を本来の状態のまま観察することができます。 しかし、染色されたバスウッドという木の切片などの試料も暗視野観察に適しており、美しく色彩豊かな画像を得ることができます。
染色されたバスウッドの薄切片の暗視野画像。
暗視野顕微鏡に必要な機器
ほとんどすべての明視野顕微鏡は、簡単に暗視野照明に転換することができます。 必要な機器は以下のとおりです。
- 明視野顕微鏡との互換性: 暗視野顕微鏡の構成物に対応している研究室の標準的な顕微鏡。
- 暗視野コンデンサーまたは暗視野ストップ・暗視野インサート: 専用の暗視野コンデンサーは、求められている高いNA値を提供します。 また、コンデンサーインサートを使用することで必要な光円錐を作り出し、さまざまな観察方法に柔軟に対応することができます。
- 対物レンズの互換性: 対物レンズは、コンデンサーの設定の開口数に適合させる必要があります。
- 照明光源: 中央の照明が遮られているため、それを補うには強力な光源が必要です。
- コンデンサー調整ツール: コンデンサーを中央に配置し、均一な照明を確保するために必要です。
- 清浄なスライドと光学系: スライドガラスを清潔に保つことは非常に重要です。少しでもゴミがあると光が散乱して、画像の品質が低下します。
暗視野顕微鏡の設定方法
暗視野観察用の顕微鏡の設定は簡単です。 最適な結果を得るには以下の手順に従ってください。
- 暗視野コンデンサーまたはストップの取り付け: 現在ご利用のコンデンサーを暗視野専用のコンデンサーと交換するか、対応するコンデンサーに暗視野ストップを取り付けます。
- 試料の配置と準備: スライドとカバーガラスが清潔であることを確認したら、試料をステージに置きます。
- コンデンサーの位置合わせと焦点合わせ: コンデンサーをきちんと中央に配置して、焦点を合わせます。 視野の中央に暗い部分が見える場合は、コンデンサーの位置が合っていない可能性があります。
- 互換性のある対物レンズの使用: 暗視野コンデンサーに適した開口数の対物レンズを選択します。
- 照明を明るくする: 光源の出力を上げます。 暗視野顕微鏡法では中心光線が遮断されるため、明視野顕微鏡法よりも多くの光が必要です。 注: 長時間の強い光に敏感な生体試料には注意してください。
ご利用の画像化アプリケーションに合うように暗視野観察に対応した顕微鏡を設定する際に専門家のアドバイスが必要な方は、Evidentチームに今すぐお問い合わせください。