表面粗さ測定ーパラメーターを選ぶ

工業用顕微鏡

概要

粗さパラメーターの選び方

サンプルの2次元・3次元のイメージは異なって見えるのにSaパラメーターの測定値はほぼ同じ。また、サンプルの特性が異なるのにイメージもSqの測定値も変わらない。そのようなご経験はありませんか?
3次元粗さの評価で一般的に用いられるSaSqSzなどのパラメーターにおいて、サンプル間の差が見いだせないことがあります。そのような場合、他のパラメーターに着目してはいかがでしょうか?
評価の目的別に事例を用いて詳しく解説します。

凹凸の大きさを評価したい(SqSaSzSpSv

凹凸の大きさを評価するには高さパラメーター(SqSaSzSpSv)を用います。高さパラメーターはヒストグラム上で下図のような関係になります。

Sq(二乗平均高さ)は高さ分布の標準偏差と同義であり、統計的に取扱い易いパラメーターとして知られています。Sa(算術平均高さ)は平均面からの高低差の平均値です。高さ分布が正規分布の場合、Sa≒0.8*Sqとなる関係があります。

SzSqSvは高さの最大値や最小値を利用するため、測定ノイズ等により結果が不安定になる場合があります。高さパラメーターは高さの分布情報のみを利用するパラメーターです。従って、水平方向の形状的な特徴はパラメーター値に反映されないことには注意が必要です。

凹凸の大きさを評価したい(Sq、Sa、Sz、Sp、Sv)

測定事例「自動車内装部品のシボの形状評価」についての詳細はこちら

測定事例「5G向けプリント基板の銅箔の表面粗さ ~Rz(最大高さ)以外の有効な粗さパラメーターの提案」についての詳細はこちら

高さの分布を評価したい(SskSku、ヒストグラム)

高さの分布の評価にはヒストグラムの曲線形状を評価するのが一般的です。ヒストグラムの曲線形状(分布)の偏りを評価する指標としてSskパラメーターがあります。

Ssk=0で高低差が均等に分布している状態、マイナス符号で高い方向、プラス符号で低い方向に偏って分布している状態です。摺動摩耗によって高い部分の形状が削られた標本では、Sskはマイナス符号をとる傾向があります。この性質を利用して摩耗度合いの評価指標として利用されることもあります。

高さの分布を評価したい(Ssk、Sku、ヒストグラム)

目の細かさを評価したい(SalSdqSdr

Salパラメーターは同じような凹凸形状の密集度合いを長さの単位で数値化します。値が小さいほど目が細かいといえます。
また、目の細かさを表現する間接的な評価指標として局所的な勾配と表面積が挙げられます。Sdqパラメーターは表面の局所的な勾配の平均値、Sdrパラメーターは表面積の増加率を表しています。SaSqなどの高さパラメーターが同程度の場合、Sdq(勾配)やSdr(表面積)の値が大きいほど目が細かいと言えます。

目の細かさを評価したい(Sal、Sdq、Sdr)

測定事例「粗さのパラメーターRa、Saで差が出ない表面形状を別のパラメーターで定量化-スピードメーターカバー防眩性の評価」についての詳細はこちら

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方向性を評価したい(StdStr、方向プロット)

方向性プロットは、表面の方向性を角度チャートで表現したものです。方向性が強いほどピークが鋭くなります。また、最も強いピークが最外周の円に接するように方向性の強さを正規化しています。Stdパラメーターは方向プロットでピークの大きい順番にその角度を示します。
Strパラメーターは方向性の強さを数値で表します。Str<0.3で異方性(方向性)表面、Str>0.5で等方性表面です。

方向性を評価したい(Std、Str、方向プロット)

周期性を評価したい(PSD)

PSD(パワースペクトル密度)は表面の波長成分ごとの凹凸の大きさを表しています。周期性のある標本ではPSDのグラフにピーク(矢印)が立ちます。ピークの横軸を読みとることとで、周期性の周波数(周期の逆数)を知ることができます。
周期性が無い場合はおおよそ右下がりのグラフになります。

周期性を評価したい(PSD)

支配的な形状成分を評価したい(PSD)

PSD(パワースペクトル密度)は表面の波長成分ごとの凹凸の大きさを表しています。“緩やか”、“細やか”といった形状的な特徴はPSDのグラフにも現れます。
緩やかな形状では低周波側(グラフ左側)の値が大きくなります。
細やかな形状では高周波側(グラフ右側)の値が大きくなります。

支配的な形状成分を評価したい(PSD)

突起の数やその先端形状を評価したい(SpdSpc

表面の突起部は物体間の接触や摩擦・摩耗といった現象に関連します。形体画像(Feature image)では表面の地形的な特徴(山、谷、尾根線、水路線)を分類して表示します。
Spdパラメーターは形体画像で山と分類された箇所(ピンク色部)の密度(単位面積あたりの個数)を表します。
Spcパラメーターは形体画像で山と分類された箇所のピークの曲率半径の平均値を表します。
Spcの値が大きいほど突起部の曲率は小さく(鋭く)、値が小さいほど曲率は大きく(鈍く)なります。

突起の数やその先端形状を評価したい(Spd、Spc)

摩耗前後の変化量を評価したい(SkSpkSvk

通常、表面の高い位置から摩耗は進行します。従って摩耗合いを評価するには高さの分布に基づいたパラメーターの利用が効果的です。
摩耗によって負荷曲線の高さの高い部分の曲線は下側に、低い部分の曲線は上側に移動します。
摩耗に伴うこのような変化によってSkSpkは小さくなります。

摩耗前後の変化量を評価したい(Sk、Spk、Svk)

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