表面粗さ測定ーパラメーターについて
工業用顕微鏡
輪郭曲線方式
輪郭曲線方式(線粗さ)のパラメーター
(JIS B0601:2013)
(JIS B0601:2013)
(JIS B0601:2013)
(JIS B0601:2013)
(JIS B0601:2013)
(JIS B0671-2:2002)
(JIS B0631:2000)
* 輪郭曲線方式と三次元方式では算出条件が異なる場合があります
山及び谷の高さパラメーター
最大高さ(Rz)
基準長さにおいて、輪郭曲線の山高さZpの最大値と谷深さZvの最大値の和を表します。
- JIS’ 94ではRy
- 山(Profile peak):輪郭曲線の平均線(X軸)より上側(物体側から空間側の方向)の部分
- 谷(Profile valley):輪郭曲線の平均線(X軸)より下側(周囲の空間から物体側に向かう方向)の部分
Pz 断面曲線の最大高さ
Wz 最大高さうねり
POINT
広く利用されるパラメーターですが、ピーク値を利用するため、キズやゴミ、測定ノイズの影響を受けやすいことに注意が必要です。
最大山高さ(Rp)
基準長さにおいて、輪郭曲線の山高さZpの最大値を表します。
Pp 断面曲線の最大山高さ
Wp うねり曲線の最大山高さ
最大谷深さ(Rv)
基準長さにおいて、輪郭曲線の谷深さZvの最大値を表します。
Pv 断面曲線の最大谷深さ
Wv うねり曲線の最大谷深さ
平均高さ(Rc)
基準長さにおいて、輪郭曲線要素の高さZtの平均を表します。
- 輪郭曲線要素:一組の隣り合う山と谷
- 山(谷)と識別する最小高さと最小長さ
最小高さの識別:Rzの10%
最小長さの識別:基準長さの1%
Pc 断面曲線要素の平均高さ
Wc うねり曲線要素の平均高さ
最大断面高さ(Rt)
基準長さではなく、評価長さにおいて、輪郭曲線の山高さZpの最大値と谷深さZvの最大値の和を表します。
- Rt≧Rzの関係がすべての輪郭曲線で成り立つ
Pt 断面曲線の最大断面高さ(J成IS'82でRmax)
Wt うねり曲線の最大断面高さ
POINT
評価長さに対して測定するため、Rzより厳しい規格となります。ピーク値を利用するため、キズやゴミ、測定ノイズの影響を受けやすいことに注意が必要です。
十点平均粗さ(Rzjis)
基準長さにおいて、輪郭曲線の最大の山高さから5番目までの平均と、最深の谷深さから5番目までの平均との和を表します。
- JIS’94ではRz
POINT
Rzjisは旧規格JIS B0601:1994におけるRzと等価です。十点平均粗さはISO規格からは削除されましたが、日本国内では広く普及していたため、JIS規格でのみRzjisとして存続しています。
高さ方向のパラメーター
算術平均高さ(Ra)
基準長さにおいて、Z(x)の絶対値の平均を表します。
Pa 断面曲線の算術平均高さ
Wa 算術平均うねり
POINT
最も広く利用されるパラメーターの1つです。平均面からの平均的な高低差の平均値です。キズ、ゴミ、ノイズなどの外乱の影響を受けにくいため、安定した結果を得ることができます。
二乗平均平方根高さ(Rq)
基準長さにおいて、Z(x)の二乗平均平方根を表します。
Pq 断面曲線の二乗平均平方根高さ
Wq 二乗平均平方根うねり
POINT
最も広く利用されるパラメーターの1つです。RMS値と呼ばれることもあります。Rqは高さ分布の標準偏差に相当します。統計的な取り扱いが容易でかつ、ゴミ、キズ、ノイズなどの外乱の影響を受けにくいため、安定した結果を得ることができます。
スキューネス(Rsk)
二乗平均平方根高さRqの三乗によって無次元化した基準長さにおいて、Z(x)の三乗平均を表します。歪度(わいど)を意味し、平均線を中心としたときの山部と谷部の対称性を表します。
Rsk=0: 平均線に対して対称(正規分布)
Rsk>0: 平均線に対して下側に偏っている
Rsk<0: 平均線に対して上側に偏っている
Psk 断面曲線のスキューネス
Wsk うねり曲線のスキューネス
POINT
高さの分布に関するパラメーターです。滑り面の摩耗や潤滑用の油溜まりの評価に適しています。
クルトシス(Rku)
二乗平均平方根高さRqの四乗によって無次元化した基準長さにおいて、Z(x)の四乗平均を表します。表面の鋭さの尺度である尖度(せんど)を意味し、高さ分布のとがり(鋭さ)を表します。
Rku=3: 正規分布
Rku>3: 高さ分布が尖っている
Rku<3: 表面凹凸の高さ分布がつぶれているような形状になる
Pku 断面曲線のクルトシス
Wku うねり曲線のクルトシス
POINT
山部や谷部の先端形状に関するパラメーターです。二物体の接触状態の解析に適しています。
横方向のパラメーター
平均長さ(RSm)
基準長さにおいて、輪郭曲線要素の長さXsの平均を表します。
- JIS’94ではSm
- 山(谷)と識別する最小高さと最小長さ
最小高さの識別:Rzの10%
最小長さの識別:基準長さの1%
Psm 断面曲線要素の平均長さ
Wsm うねり曲線要素の平均長さ
POINT
表面の凹凸の高さではなく、スジ目や粒子の横方向の大きさを評価するパラメーターです。
複合パラメーター
二乗平均平方根傾斜(Rdq)
基準長さにおいて、局部傾斜dz/dxの二乗平均平方根を表します。
Pdq 断面曲線の二乗平均平方根傾斜
Wdq うねり曲線の二乗平均平方根傾斜
POINT
局所的な傾斜角の大きさを評価するため、表面の凹凸の険しさを数値化できます。
負荷曲線及び確率密度関数並びにそれらに関連するパラメーター
負荷曲線、確率密度関数とは
負荷曲線は標本をある高さcで切断したときに現れる実体部の割合をcの関数として表わした曲線です。ベアリング曲線(BAC)やアボット曲線とも呼ばれます。確率密度関数は高さZxの確率を表わします。高さ分布のヒストグラムと等価です。
負荷長さ率(Rmr (c))
切断レベルc(%またはμm)において、輪郭曲線要素の負荷長さMl (c) の評価長さに対する比率を表します。
Pmr (c) 断面曲線の負荷長さ率(旧tp)
Wmr (c) うねり曲線の負荷長さ率
切断レベル差(Rdc)
Rdcは二つの負荷長さ率に一致する高さ方向の切断レベルcの差を表します。
Pdc 断面曲線の切断レベル差
Wdc うねり曲線の切断レベル差
相対負荷長さ率(Rmr)
Rmrは基準とする切断レベルC0と輪郭曲線の切断レベル差Rδcによって決まる負荷長さ率を表します。
Pmr 断面曲線の相対負荷長さ率
Wmr うねり曲線の相対負荷長さ率
プラトー構造表面パラメーター
プラトー構造表面パラメーター
負荷曲線の40%に相当する区間の傾きが最も小さくなる直線(等価直線)からRk、Mr1、Mr2を求めます。Rkの幅で分断された負荷曲線の突出部分の面積と等しくなるような三角形を考え、この三角形からRpk、Rvkを求めます。
Rk コア部のレベル差
Rpk 突出山部高さ
Rvk 突出谷部深さ
Mr1, Mr2 コア部の負荷長さ率
POINT
摺動や摩耗に関する評価に適しています。エンジンのシリンダ表面の潤滑性の評価にも使われます。
モチーフパラメーター
モチーフパラメーター
モチーフパラメーターは、サンプル表面の包絡形状をもとに、表面の接触状態を評価するためのパラメーターです。
AR 粗さモチーフの平均長さ:評価長さで求めた粗さモチーフ長さARiの算術平均値
R 粗さモチーフの平均深さ:評価長さで求めた粗さモチーフ深さHjの算術平均値
Rx 粗さモチーフの最大深さ:評価長さで求めたHjの最大値
AW うねりモチーフの平均長さ:評価長さで求めたうねりモチーフ長さAWiの算術平均値
W うねりモチーフの平均深さ:評価長さで求めたうねりモチーフ深さHWjの算術平均値
Wx うねりモチーフの最大深さ:評価長さにわたって求めたHWjの最大値
POINT
潤滑機構の滑り評価やガスケット等の接触表面の評価に適しています。
三次元方式(面粗さ)のパラメーター
高さ方向のパラメーター
最大高さ(Sz)
輪郭曲線(線粗さ)パラメーターのRzを三次元に拡張したパラメーターです。最大高さSzは最大山高さSpと最大谷深さSvの和と等しくなります。
POINT
広く利用されるパラメーターですが、ピーク値を利用するため、キズやゴミ、測定ノイズの影響を受けやすいことに注意が必要です。
算術平均高さ(Sa)
輪郭曲線(線粗さ)パラメーターのRaを三次元に拡張したパラメーターです。
測定対象領域において、Z(x,y)の絶対値(平均面からの高低差)の平均を表します。
POINT
最も広く利用されるパラメーターの1つです。平均面からの平均的な高低差の平均値です。キズ、ゴミ、ノイズなどの外乱の影響を受けにくいため、安定した結果を得ることができます。
二乗平均平方根高さ(Sq)
輪郭曲線(線粗さ)パラメーターのRqを三次元に拡張したパラメーターです。
測定対象領域において、Z(x,y)の二乗平均平方根を表します。
POINT
最も広く利用されるパラメーターの1つです。RMS値と呼ばれることもあります。Sqは高さ分布の標準偏差に相当します。統計的な取り扱いが容易でかつ、ゴミ、キズ、ノイズなどの外乱の影響を受けにくいため、安定した結果を得ることができます。
スキューネス(Ssk)
輪郭曲線(線粗さ)パラメーターのRskを三次元に拡張したパラメーターであり、Rsk同様に高さ分布のヒストグラムの偏り具合(歪度:わいど)を評価するパラメーターです。
Ssk=0: 平均線に対して対称
Ssk>0: 平均線に対して下側に偏っている
Ssk<0: 平均線に対して上側に偏っている
POINT
高さの分布に関するパラメーターです。滑り面の摩耗や潤滑用の油溜まりの評価に適しています。
クルトシス(Sku)
輪郭曲線(線粗さ)パラメーターのRkuを三次元に拡張したパラメーターであり、Rku同様に高さ分布のヒストグラムのとがり具合(尖度:せんど)を評価するパラメーターです。
Sku=3: 正規分布
Sku>3: 高さ分布が尖っている
Sku<3: 表面凹凸の高さ分布がつぶれているような形状になる
POINT
山部や谷部の先端形状に関するパラメーターです。二物体の接触状態の解析に適しています。
空間パラメーター
自己相関長さ(Sal)
表面の自己相関が相関値s(0≦s<1)に減衰する最も近い横方向の距離として定義されています。特に記述のない場合は=0.2です。
テクスチャのアスペクト比(Str)
表面の自己相関が相関値s(0≦s<1)に減衰する最も遠い横方向の距離とSalの比として定義され、表面の異方性、等方性の強さを示します。
Strは0~1の範囲をとり、通常Str>0.5で強い等方性を示し、反対にStr<0.3で強い異方性を示します。
POINT
Salは表面の凹凸の高さではなく、スジ目や粒子の横方向の大きさや複雑さを評価するパラメーターです。
複合パラメーター
二乗平均平方根勾配(Sdq)
輪郭曲線(線粗さ)パラメーターのRdqを三次元に拡張したパラメーターです。表面の凹凸形状の局部的な勾配(傾斜)の平均的な大きさを表します。Sdqの値が大きいほど急峻な表面となります。
POINT
局所的な傾斜角の大きさを評価するため、表面の凹凸の険しさを数値化できます。
展開界面面積率(Sdr)
表面積の増加割合を表わします。表面積A1と、その表面をXY平面に投影した時の面積A0から増加割合を求めます。
POINT
表面の形状が緻密で起伏が激しいほど、Sdrは大きくなります。
機能と関連するパラメーター
輪郭曲線(線粗さ)パラメーターのプラトー構造表面パラメーター(Rk, Rpk, Rvk, Mr1, Mr2)を三次元に拡張したパラメーターです。 負荷曲線上でのパラメーター算出方法は輪郭曲線方式と同様です。
Sk コア部のレベル差:コア部の上限レベルと下限レベルの差
Spk 突出山部高さ:コア部の上にある突出山部の平均高さ
Svk 突出谷部深さ:コア部の下にある突出谷部の平均深さ
Smr1 突出山部とコア部を分離する負荷面積率。パーセントで表示する
Smr2 突出谷部とコア部を分離する負荷面積率。パーセントで表示する。
POINT
摺動や摩耗に関する評価に適しています。エンジンのシリンダ表面の潤滑性の評価にも使われます
切断レベル差(Sxp)
負荷面積率pとqに一致する高さ方向の切断レベルの差。特別な指示が無い場合はp=2.5% q=50%の値を用います。
負荷曲線上で実体部と空間部に相当する体積を図のように求めます。負荷面積率が10%と80%の位置を境界として、谷部、コア部、山部に分けられます。
Vvv 突出谷部空間体積
Vvc コア部空間体積
Vmp 突出山部実体体積
Vmc コア部の実体体積
POINT
摩耗評価、潤滑油保持の評価等によく使われます
その他のパラメーター
テクスチャの方向(Std)
表面凹凸の方向性(筋目の向き等)を角度で表します。二次元フーリエ変換画像の角度スペクトルが最大となる角度から求めます。
POINT
Stdは最も方向性の強い角度を表わしますが、方向チャートでは、2番目、3番目に強い角度も読みとることができます。
形体パラメーター
山頂密度(Spd)
単位面積あたりの山頂の数です。ここでは所定サイズよりも大きな山頂だけをカウントします。特に指定が無い場合、所定サイズは輪郭曲面の最大振幅の5%の高さに設定されます。輪郭曲面に含まれる山頂の数を、輪郭曲面の投影面積A0で除算することで求めます。
山頂の算術平均曲率(Spc)
山頂の先端部の平均曲率(平均的な鋭さ)を表わします。ここでは所定サイズよりも大きな山頂の曲率だけを考慮します。特に指定が無い場合、所定サイズは輪郭曲面の最大振幅の5%の高さに設定されます。基準領域に含まれる山頂の曲率の算術平均値から求めます。
POINT
二物体の接触状態の解析に適しています。
10点平均高さ(S10z)
基準領域内にある山頂及び谷底のうち、高いものから5番目までの山頂の平均高さと、深いものから5番目までの谷底に平均深さ(正の値)の和。
山頂の5点平均高さ(S5p)
基準領域内にある山頂のうち、高いものから5番目までの山頂の高さの平均値です。
谷底の5点平均深さ(S5v)
基準領域内にある谷底のうち、深いものから5番目までの谷底の深さ(正の値)の平均値です。