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APEXVIEW™ APX100ベンチトップイメージングシステムにおける画像貼り合わせの向上

はじめに

APEXVIEW APX100ベンチトップイメージングシステムは、細胞や組織標本の観察に使用されます。 特に、組織標本については、より広視野のサンプル全景から拡大撮影した領域を容易に探すことができます。

広範囲の高解像度画像を得るために画像を貼り合わせることは、マクロ-ミクロ組織標本を観察するための有用な手法です。画像の貼り合わせには、次の3つのポイントが最も重要です。

1. 貼り合わせの精度

貼り合わせ画像は、各視野角ごとに電動XYステージを移動させることで貼り合わせ画像が構築されます。

しかしながら、 XYステージには若干のズレが生じるため、各視野角のXY座標のみによって貼り合わせ位置を決めると、貼り合わせたときに、貼り合わせ画像は視野角ごとにずれます。 そのため、画像処理を用いて、画像内を探すことにより貼り合わせ位置を決定します。 ずれが生じるとその後の画像解析に影響するため、画像を貼り合わせる際にずれが生じないようにする必要があります。

2. 貼り合わせ画像の品質

視野角の周辺では、光学的要因により、画像ムラが生じてしまします。 貼り合わせ画像を取得する際には、貼り合わせムラをなくすことが重要です。

3. スループット

画像を貼り合わせるには精度と画質が要求されるため、各視野角の画像取得に時間がかかります。 画像取得後に貼り合わせ画像を処理するには、さらに時間を要します。貼り合わせ画像の取得には、画質とスループットの両方がより求められます。

APX100イメージングシステムにおける画像貼り合わせの向上

貼り合わせ画像の取得は、APX100イメージングシステムの特長的なアプリケーションの一つです。

そのため、ソフトウェアをアップグレードすることによって貼り合わせ画像の品質を向上させることがでいます。 同時に、APX100イメージングシステムを用いて実験の効率性をさらに向上します。

APX100イメージングシステムの制御ソフトウェアであるcellSens™ APEXソフトウェアは、バージョン4.3.1で画像貼り合わせ機能が向上しました。

1. 貼り合わせ精度の向上

貼り合わせアルゴリズムの向上

視野角内の隣接する画像の貼り合わせは、画像処理によって行われます。 旧バージョンまでは、画像が単一視野角ごとにすぐに貼り合わされました。これはシーケンシャルな貼り合わせと呼ばれる方法です。

シーケンシャルな貼り合わせ方法では、 隣接する視野角画像の貼り合わせ領域がサンプルのない背景領域のみであり、貼り合わせ領域には少しの情報しか含まれません。 これが貼り合わせにずれを生じさせる要因でした。

cellSens APEXソフトウェアバージョン4.3.1では、位置合わせを向上させました。 貼り合わせアルゴリズムは、最適な位置が得られるまで、一定範囲の視野角の画像を保持してから、保持した範囲内で最適な位置を見つけるようになりました(図1)。

Stitching algorithm improvements on the APEXVIEW APX100 benchtop fluorescence microscope. 図1: 以前の貼り合わせアルゴリズム(左図)とcellSens APEXソフトウェアバージョン4.3.1における最新の貼り合わせアルゴリズム(右図)。 固定フレーム: 配置されたフレーム。 バッファーフレーム: 位置決め前の保持フレーム。 位置合わせフレーム: 最適な位置決めのためのフレーム。

シーケンシャルな貼り合わせ方法では、位置合わせに使用できるのはすでに配置されているフレームのみでした。 一定範囲の視野角の画像を保持する貼り合わせ方法では、位置合わせをするフレームを、すでに配置されているフレームや保持された範囲内のフレームから配置することができます。

この最新の方法では、ソフトウェアバージョン4.3.1で導入されたアルゴリズムにより、背景を含む貼り合わせ領域でさえ、ずれのない貼り合わせ画像を取得することが可能になっています(図2)。

Example of stitching improvements on the APEXVIEW APX100 benchtop fluorescence microscope.
図2: cellSens APEXバージョン4.3.1で最新の貼り合わせアルゴリズムを使用して取得した貼り合わせ画像(左図)とアルゴリズムを使用せずに取得した貼り合わせ画像(右図)の比較。 バージョン4.3.1を使用した貼り合わせ画像では、構造が重なっているように見えない。

貼り合わせ画像を取得するための時間は、バージョン4.3.1でも同じままです。

貼り合わせの精度に影響を及ぼす光学現象の補正

倍率誤差などの光学的要因は、貼り合わせの精度に影響を及ぼすことがあります。cellSens APEXソフトウェアには、この光学現象を補正する機能があります。

倍率補正機能

対物レンズにはわずかな倍率誤差があるため、この誤差を補正することにより、さらに精度の高い貼り合わせが可能になります。

APX100イメージングシステムでは、cellSens APEXソフトウェアバージョン4.2で導入された倍率補正機能を使用することにより、対物レンズを含めた顕微鏡全体の総合的な倍率を補正できます。 これにより、精度の高い貼り合わせ画像を生成することが可能になります(図3)。

Magnification correction enabled and disabled on the APEXVIEW APX100 benchtop fluorescence microscope.
図3: cellSens APEXソフトウェアで倍率補正を有効にして取得した画像(左図)と無効にして取得した画像(右図)の比較。

倍率補正のプロセスは画像を撮影するたびにリアルタイムで行われるため、補正の有無にかかわらず取得時間は変わりません。

2. 貼り合わせ画像の品質の向上

ひずみなどの光学的要因は貼り合わせ画像の品質に影響を及ぼすことがあります。cellSens APEXソフトウェアには、この現象を補正する機能があります。

ひずみ補正機能

システム顕微鏡の対物レンズを通して画像が生成されるとき、視野角にひずみと呼ばれる現象が発生します(図4)。

Distortion in the field of view of a system microscope. 図4: 理想的な画像(点線)と対物レンズを装着したときの画像(実線)の模式図。 視野角の端に行くほどひずみが大きくなる。

視野角にひずみがあるまま画像の貼り合わせが行われると、構造が貼り合わせ位置の四隅に2回現れます。 この四隅での構造の二重出現は、画質が劣化する可能性を高めます。

ひずみを避けて、高品質の貼り合わせ画像を取得するための方法の1つは、画像の中央のみを使用することです。 しかしながら、この手法では撮影する画像の枚数が増え、スループットが低下します(図5)。

Fields of view used to avoid distortion effects in stitched images.

図5: ひずみの影響を避けるために視野角(FOV)を小さくする必要がある(a)。 貼り合わせのために必要な視野角の数は、FOVの違いによって異なる(b)。

cellSens APEXバージョン4.3.1では、このひずみを補正する機能が追加されています(図6)。 この機能では、専用のキャリブレーションスライドを使用して各対物レンズについてひずみ量が測定されます。 次に、貼り合わせ画像を取得するときに、1つの視野角内の各画像について測定されたひずみ量に基づいて、ひずみが補正されます。

Example of distortion correction enabled and disabled. 図6: ひずみ補正を有効したもの(左図)と無効にしたもの(右図)の比較。

3. ワークフローの向上

APX100イメージングシステムは、画像取得から貼り合わせまでのプロセス全体を一連のワークフローとして自動的に実行することで、貼り合わせ画像の効率的な取得を可能にします。

APX100イメージングシステムには、実験ワークフローを短縮するスマートサンプルナビゲーターという機能もあります。 スマートサンプルナビゲーターは、マクロ画像のキャプチャーからサンプルを10秒で自動検出できます。 cellSens APEXソフトウェアバージョン4.2で追加されたConvert Sample Area to Scan Area(サンプル領域をスキャン領域に変換)機能により、ユーザーは検出されたサンプル領域を貼り合わせ取得領域として設定することができます(図7)。

これにより、観察前準備から、貼り合わせ位置の設定、画像取得までのワークフローが大幅に短縮します。

Rectangular scan area in cellSens APEX software for the APX100 microscope. 図7: cellSens APEXソフトウェアでは、Convert Sample Area to Scan Area(サンプル領域をスキャン領域に変換)機能がサンプル領域から長方形のスキャン領域を作成する。

まとめ

APEXVIEW APX100ベンチトップイメージングシステムは、貼り合わせ画像の画質と精度が向上し、画像の設定からキャプチャーまで実験の効率性を合理化されました。 ソフトウェアの貼り合わせアルゴリズムの改良に加えて、当社のエンジニアは光学的要因の補正を考慮し、最高のパフォーマンスが得られるようにしました。

まとめると、画像貼り合わせに関して強化された点は次のとおりです。

著者

Takuma Kimura

Takuma Kimura

Evident、研究開発、ソフトウェア開発

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