細胞再生が難聴回復の鍵となる可能性
難聴のほとんどは、内耳内の感覚有毛細胞の損傷によって引き起こされます。これらの細胞を再生できれば、聴力を回復できる可能性があります。James Hudspeth教授はこの目標を生涯の仕事としており、オリンパスの顕微鏡は 30 年にわたってその仕事にともに携わってきました。
内耳内の感覚有毛細胞は自然に再生することはなく、その消失が聴力の低下や喪失の原因となり、難聴に至ることがあります。これらの細胞がどのように機能するのか、また、それらが効果的に再生できるかどうかを最大限に学ぶことが、難聴からの回復の鍵です。
James Hudspeth博士は、分子レベルで聴覚を研究し理解することに専門家としてのキャリアを捧げてきました。ニューヨーク市にあるロックフェラー大学の感覚神経科学研究所でHudspeth博士とそのチームが行っている研究の大部分は、感覚有毛細胞を高倍率で刺激し観察することであり、変異すると難聴を引き起こす可能性がある200種類以上の遺伝子の分析も研究に含まれます。Hudspeth博士のチームはこれらの変異をさらに理解するためにオリンパス社の顕微鏡を使用しています。
「私たちがオリンパスの顕微鏡を使用する主な理由は2つあります」とHudspeth博士は言います。「まず、顕微鏡の品質がとても高いこと。本体、レンズ、すべての部品がすばらしい作りになっています。2つ目はもっと重要かもしれませんが、Evidentの人々が私達の求める特注品についていつも進んで耳を傾けてくれたことです。さまざまな改良を実現してくださったおかげで、よりよい研究ができています」。
「何かをやってみようとする場合に、どうやればできるか知りたければ、Evidentがその疑問に答えてくれます」と博士は言います。
米国だけでも、重大な聴覚障害を抱える人が 3,000 万人います。私たちは誰でも、聴覚に問題を抱えている人が知り合いにいるでしょう。世界中で 5 億人が聴覚障害を抱えていると推定されており、これらの問題のほとんどは感覚有毛細胞の損傷によって引き起こされています。Hudspeth氏は言います。「私達が長期的に目指しているのは、聴力が低下している、あるいは聴力を失った人をもう一度聞こえるようにすることです」。
Hudspeth氏の広範な研究は、将来的に細胞再生の解決策につながる可能性のある数多くの開発研究につながっています。最近、彼とそのチームは、細胞の成長を調節することで動物の臓器の大きさを制御する Hippo シグナル伝達経路に関連する再生の可能性を研究しています。
Hippo シグナル伝達経路は、過剰な組織の成長を阻止する働きをします。これを処方的方法で「ブロック解除」すると、通常は自己治癒できない細胞(内耳感覚有毛細胞、心臓細胞、網膜細胞など)の再生が可能になる可能性があります。Hudspeth氏のチームは最近、経路の一部を抑制できる分子を特定しました。研究チームは現在、生きた動物に対するこの分子の効果を分析しており、他の研究者と協力して、聴覚障害だけでなく視力喪失や心臓血管疾患に苦しむ人々に対する可能性を探っています。