創薬におけるモデル生物としての網膜イメージング:ビジョンからインサイトへ
Henri Leinonen博士は、クオピオに所在する東フィンランド大学(UEF)の網膜生理学および薬理学研究に特化したレイノネン網膜研究所のグループを率いています。このブログ投稿では、UEF薬学部がどのように APEXVIEW™ APX100ベンチトップイメージングシステムが網膜研究においてどのようにイメージング効率化を実現化に貢献しているのかをご紹介します。
視覚における網膜とその役割について
眼は、人間の最も複雑な器官の一つです。角膜、水晶体、虹彩、硝子体、網膜など、いくつかの重要な構成部分から成り立っています。各構成部分は、光の焦点を合わせ、鮮明な画像を作り出す機能に貢献しています。
眼の奥にある網膜は、光を脳が解釈できる神経信号に変換することで、視覚において重要な役割を果たしています。網膜の内部(水晶体に向かって)には神経節細胞、アマクリン細胞、双極細胞、水平細胞があります。最外層には桿体と錐体(視細胞)、色素上皮、脈絡膜があります。
光は視細胞によって吸収されて電気信号に変換され、網膜の内部ニューロンに伝達されて視神経を通じて脳に達し、脳で周囲の環境が視覚的に解釈されます。網膜は間違いなく、身体の中で最も徹底的に研究された神経系です。
発見の眼 - Leinonen博士の網膜研究
Henri Leinonen博士率いる東フィンランド大学の研究グループは、網膜をモデル器官として用い、感覚低下に対する機能適応の分子メカニズムを研究しています。またこのモデルでは、網膜変性症を含む神経変性疾患に対する新薬の発見にも役立ちます。
Leinonen博士は網膜生理学と薬理学の分野で多大な貢献をしてきました。2020年、Leinonen博士らは感覚障害に対する網膜の適応性に関する論文を発表しました。それ以来、変性疾患における網膜の恒常的可塑性を促進する分子経路の解明に取り組んでいます。2024年には、網膜変性症治療を目的としたドラッグリパーパシングのアプローチの前提条件を示した重要な研究について発表しました。Leinonen網膜研究所の目的は、遺伝性網膜ジストロフィーを対象とした初の突然変異横断的治療を開発することです。
網膜サンプルを簡単かつ素早くイメージングすることで研究を促進
2024年9月には、Leinonen博士はUEF薬学部の研究を促進するため、APEXVIEW™ APX100ベンチトップ導入を検討しました。薬学部には、数百人もの学生が所属しています。
同大学がAPX100を導入した主な理由の一つは、その使い勝手の良さです。修士論文の研究は比較的短期間であり、その短期間で多くのデータを取得するためにはAPX100は非常に有効で、学生でも簡単に高品質な画像を取得することできます。
抗S-オプシン抗体(紫)と抗M-オプシン抗体(緑)で染色したマウス網膜フラットマウント。破線は、光による損傷で錐体密度が低下した領域を強調しています。画像は、EvidentのAPX100システムを用いて撮影しました。画像提供: Henri Leinonen博士。
ベンチトップイメージングシステムが研究促進をサポート
APX100ベンチトップイメージングシステムは、研究者が簡単かつ迅速に論文掲載レベルのインパクトのある鮮明な画像を取得できます。様々な観察方法やサンプルを使用する研究室では、明視野観察、蛍光観察、位相観察、および新たに特許を取得したグラディエントコントラストを含む複数の観察法に対応しています。
また、スライドガラスやディッシュだけではなく、ウェルプレートなどの多様な容器を使用することができます。さらに、APX100にはシールドと防振機構が内蔵されたオールインワンシステムで、すべての撮影をおいて暗室不要です。実験台に設置するだけで、最小限のトレーニングで高品位な画像を取得できます。
APX100ベンチトップイメージングシステムにて操作性体感及びデータ取得に興味ある方は、今すぐデモをお申込みください。
記事の作成にご協力くださった、Henri Leinonen博士に感謝の意を表します。
参考資料
- Grossniklaus, H.,Geisert, E., and Nickerson, J. 2015.“Introduction to the Retina.” Progress in Molecular Biology and Translational Science. Volume 134: 383–396.
- Leinonen, H. et al. 2020. “Homeostatic Plasticity in the Retina is Associated withMaintenance of Night Vision During Retinal Degenerative Disease.” eLife.
- Leinonen, H. et al. 2024. “A Combination Treatment Based on Drug Repurposing Demonstrates Mutation-Agnostic Efficacy in Pre-Clinical Retinopathy Models.” Nature Communications. 15(1): 5943.